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THAILAND: TSUNAMI RIGHTS & LEGAL AID REFERRAL CENTER

タイ:スマトラ沖地震津波被災者のための法的支援センター

2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震による津波で被害を受けたタイ南部の被災者は、いまなお土地や資産をめぐる争い、遺産相続、失業、孤児の親権や養子縁組といった法的権利に関わる諸問題に悩まされています。

日本政府の拠出を受け世界銀行が運営する日本社会開発基金[JSDF]により、2006年3月The Asia Foundation(TAF)はタイ南部の津波被災者の法的問題の支援としては国際的団体では唯一となる「津波被災者のための法的支援センター[T-LAC)」をタイ南部のクラビ県に開設しました。

T-LACは、弁護士、医師、ソーシャルワーカー、通訳といった多様な分野の専門家や協力者で構成され、津波の被害を受けたタイ南部のラノン、パン・ガ、クラビ、サトゥンの各県の住民に包括的な法律業務と法律相談を無料で提供し、相談者の公正な権利の確保のための支援を行っています。弁護士によるサポートに加え、司法の場で使われるタイ標準語の通訳サービス、法廷審問に出廷するための旅費、訴訟手続きに必要な書類の準備など、すべての費用がT-LACによって支給され、被災者やコミュニティが費用面の問題を心配することなく司法制度による諸問題の解決が出来るよう支援を行っています。また、償還請求を行う上で被災者が必要とする心身両面での医療に関する支援も行っています。

センターで相談を受けるだけではなく、被災した村落へ法律の専門家とボランティアの移動チームを派遣し、法的支援のサービス実施の周知や訴訟の取りまとめなど、支援を必要とする被災者が容易にサービスを利用できるような環境を整えています。また、このプロジェクトによって支援される訴訟依頼の多くがコミュニティからの相談であることから、コミュニティの法的ニーズ対応に必要な知識と能力を備えたリーダー育成のため、市民参加型の研修も行う計画です。

センター開設から1年が経過し、26人のボランティア弁護士と99人のパラリーガルのチームにより支援が行われています。 

タイ:スマトラ沖地震津波被災者のための法的支援センター

支援事例:アムチャさんの場合

人気の高いリゾート地、プーケット島の南東に位置するサトゥン県のアンダマン海に接する海岸部のほとんどは国立公園であるため、多くの住民は津波の被害を免れました。しかしながら、不運にも被災者となった人々もおり、70代のアムチャさん夫妻は甚大な被害があった海岸から数百メートル離れたサトゥン県のラング地区で暮らしていました。夫であるノットさんは半農半漁で生計をたて、アムチャさんも屋根葺きで生活を助け、貧しいながらもアムチャさんの甥の里親となることで実家の家族の生活も援けていました。

突然の津波襲来で高床式の家の中は水が首までつかるほど浸水し、何とか逃げ出し助かったものの、大きな無力感が夫婦を襲いました。その後、誤った津波警報が発令されるたびに津波発生時の自分の弱さに苛まれたノットさんは、数日のうちに偏執性の妄想に苦しめられ、津波から身を守らなければと訴えながら発作を起こすようになってしまいました。適切な処置が受けられないままノットさんの症状は悪化し、不安によって引き起こされた心臓発作によって一週間後に亡くなりました。

津波から一年以上が経過しても夫を失った悲しみから抜け出せずにいるアムチャさんは、今度は全てのものを失ってしまうのではないかという不安の中で暮らしています。夫の収入が無くなったため、屋根葺きの仕事から得られる月給600バーツ(およそ2000円)で生計を立てなくてはなりません。養子である15歳の甥は、学生の身では自活することが出来ないため、学校を辞めて工事現場で働いています。

アムチャさんは夫の死亡が直接的な津波によらないことから、政府に対して補償を求めていませんでした。また、彼女が住んでいる土地は、かつては夫に所有権があったものの、夫の遺書も遺言も無いため、夫の兄弟によって没収される危機にあります。もし夫の兄弟が土地の権利を行使すれば、彼女はどうやって法的な権利を守れるのかさえ分からないまま家を失なってしまうのです。

T-LACが南部の県で行った権利意識向上のためのキャンペーンの際に、アムチャさんから相談を受けました。彼女の残り少ない資金で権利を争うことは不可能であったため、T-LACはアムチャさんが家を手放さずにすむよう相続に関する訴訟を起こすこと、彼女の養子が学校教育を受けてゆくための教育資金を得ること、法律に準じた津波被災者のための給付金がアムチャさんに支給されるよう、取り組んでいます。

支援事例:ブンサップさんの場合

60代のブンサップさんは仏教徒の家に生まれましたが、イスラム教に改宗し、夫とその家族と同居するためにタイ南部のラノン県のスクサムラン地区に移り住みました。スクサムランで話されているヤウィ語が出来ないブンサップさんは、近隣に近しい親戚もいないこともあり、いまだにその土地になじめていないと感じています。

津波の襲来で同居家族のうち、夫、息子夫妻、長女が亡くなりました。ブンサップさんと18歳の娘、そして7歳と5歳の二人の孫が助かりましたが、孫たちの両親であるブンサップさんの息子夫婦は、タイの多くの地域でいまだ行われている慣習法で結婚していたため正式な結婚証明がありませんでした。このため、ブンサップさんは実の祖母であるにも関わらず、法律上は孫の親権者として認められないことがわかりました。政府からのわずかな被災給付金は家の修理と葬儀ですぐになくなってしまったため、18歳の娘は家計を助けるために学校をやめて、単純労働の仕事に従事せざるを得ませんでした。

TAFの支援により、タイ女性弁護士会[WLAT]がスクサムラン地区で戸別訪問キャンペーンを行った際、村長からブンサップさんのケースについて話がありました。ブンサップさんは、WLATが担当した津波関連訴訟の第一号となり、WLATはブンサップさんの孫の親権者手続きのために必要な書類を提出し、7歳の孫が奨学金がもらえるように働きかけました。

ブンサップさんのその後のサポートはT-LACに移管され、ブンサップさんに政府からの老齢年金が供与されるとともに、彼女の娘が学校を続けるための奨学金を受けられるよう、社会福祉局に対し法的な請求を行っています。