


WOMEN’S EMPOWERMENT
アジア全域で民主的なガバナンスの原則と市民参加への意識が高まりつつありますが、未だ多くの国では、文化的、社会的、法的な障壁により、民主的な政治システムへの女性の完全な参加は実現していません。女性の票の質を高め、選挙が女性の票も貴重な一票として数えられる自由で公正なものであることへの認識向上を行い、女性の政治参加を促し候補者や国を代表するリーダーの選出を支援するなど、女性の選挙への参加を促すプログラムを現地パートナーの協力により行っています。
選挙は健全な民主主義を生み出す上で基本となるものですが、情報の開示を受けた有権者が不在な状態では、民主主義への移行は限定的となってしまいます。効果的な選挙の実施には、候補者や政党の経歴や選挙公約に関する情報提供や、選挙登録と投票実施の周知徹底を行うことが必要となります。このことは男性・女性問わず重要であるにも関わらず、女性の識字率の低さや政治参加への文化的・社会的制約から、アジア諸国では女性が選挙に関連する情報を得ることが困難な現状です。このような状況を踏まえ、女性達が投票する権利を確保し、投票する過程を理解し、必要な情報に到達できるようにするために、大々的な選挙教育プログラムを行いました。
2004年にアフガニスタンで実施した選挙の事前調査では、女性の選挙投票に関する間違った情報が有権者に伝えられていることが判明しました。回答者の87パーセント(男女両方を含む)が女性の投票には夫の許可が必要であり、72パーセントが女性の投票内容に関して身内男性からのアドバイスが必要であると答えています。これらの結果を踏まえ、現地の文化を損なわない形で、有権者の間違った認識を正すための選挙教育プログラムを考案しました。2005年のアフガニスタン下院及び州議会選挙では、有権者としての女性の政治参加への限定的な考え方に対して働きかけるため、現地パートナーとともに放送と活字媒体における包括的な市民教育プログラムを行い、女性の投票率は有権者の43パーセントにまで増加しました。
タイでは選挙に関する現地ボランティアグループが行う教育活動の支援を通じ、家を離れることが困難な女性の家庭を訪問し、選挙に関する資料を女性有権者に直接配布しました。家から出られない上に読み書きも出来ず、情報を得ることが困難な母親に対しては、その子供に対する市民教育を学校で実施し、各家庭で子供達が母親に対して選挙に関する知識提供を行う試みを行いました。
2004年のインドネシア選挙では、現地パートナーHapsariを支援し、女性の選挙権に関する番組をスマトラ北部地区で合計300回放映、全土の女性を対象とした政府広報を5つの放送局を通じて合計1,000回以上行いました。アチェ島では、女性の人権分野で活動を行うNGOのフラワー・アチェを支援し、10万部のポスターと25,000部のパンフレット、11,000のステッカーを配布し、女性の選挙参加を促すメッセージを発信しました。
パキスタンでは女性の有権者登録と投票率が全国的に低く、特に北西辺境州などの遠隔地域では過去の女性投票率が1パーセントと極めて低い状況でした。2007年の選挙では文化的宗教的な壁を乗り越えるべく包括的なプログラムを考案し、読み書きの出来ない地方在住の女性達に市民教育を提供し、選挙の投票情報を周知するキャンペーンを含むプログラムを考案しました。
投票者となる人々の考えと行動に関するデータを収集し、選挙教育のキャンペーンと選挙過程の分析により、男女の選挙参加により及ぼされるであろう政策決定過程への影響を予測しました。分析データは、政治参加への障壁を取り除き活発で効果的な選挙を行うためのアドボカシー活動に活用されました。
インドネシアで行った選挙プログラムの発展と評価のための一連の基礎的な調査では、女性の政治参加への抑制因子や、女性の最大の懸念事項を特定し定量化するための設問を多数含めました。この調査により女性の政治参加を妨げている考え方や信念を特定し、それらに対する的確な市民教育を行いました。これらの情報は政党にとっても、女性の懸念に応えるための公約や政策を作る上で非常に有益な情報となりました。
アフガニスタンにおける2004年の大統領選挙では、国際的な選挙監視団であるAsian Network for Free Elections[ANFREL]を支援しました。ANFRELはThe Asia Foundation(TAF)の技術支援により、男女混成の監視員からなる監視団チームを構成し、選挙の参加における男女の制限の違いに関する正確な評価を行い、結果は今後のプログラムとアドボカシー活動のために報告されました。
公職や政治の場における女性の代表者数は世界的に未だ十分ではありませんが、多くのアジア諸国の女性たちは徐々に伝統的な障壁を打ち破り、有能な政治家や政府のリーダーとなりつつあります。重要な決断や財源の配分が行われ、法律や政策の最優先事項や関心が反映される場に、女性が男性と共にリーダーの地位にいることが重要となります。女性の選挙戦への立候補と議席獲得のために、女性候補者達が有効に選挙戦を活用し、効果的なメッセージを発信し支持基盤を得るためのトレーニングプログラムを支援しています。
2001年のバングラデシュの国政選挙では、女性候補者のトレーニングと、女性と選挙に関する8つのテレビ番組をサポートしました。選挙前には、女性に関する重要な課題についての様々な討議が行われるよう促し、より多くの女性が立候補できるよう政党に促すアドボカシー活動を支援しました。
カンボジアでは、クメールの女性団体Women for Prosperity [WFP]と協同で、2002年の地方選挙に女性が立候補するためのトレーニングを実施し、合計5,527人の女性が受講しました。選出された女性議員のうち64パーセントはTAFのトレーニングプログラムの参加者となり、地方議会の女性議員数は前回の7人から1,000人に増え、要職についた女性の数は10倍にも上り、選挙は女性の参加という点において多大なる成功を収めました。また、議員同士のネットワーク作りを促すためにWFPが組織した会合の支援では、カンボジア全土の女性議員の議員活動における最も重要な知識や経験、新しい考えの共有が可能になりました。
女性が経済発展に参加し還元を得られる機会は、法的・慣習的な障壁によりアジア全域で制限されています。公平性確立のための法律が制定されても、実施や施行は厳格ではありません。経済分野における女性への差別は、不動産の所有や相続、離婚後扶養や子供の養育費の受け取り、海外への渡航、同職の男性と比較した低賃金、あるいは妊娠などによる不当解雇など、様々な側面で女性の生活に危機的な影響を及ぼしています。女性の経済的な権利と機会が保障されれば、女性のみならずその家族や社会の発展が望めます。TAFはアジア太平洋地域全域において、女性の経済的な地位向上のためのプログラムに献身的に取り組み、女性の経済的な機会を促進できるよう支援を行っています。
アフガニスタン
クンドゥズ州の極貧未亡人のための職業訓練プログラムを支援しています。現地パートナーであるKhahan Improvement Organizationを支援することで、地方の経済活動の中で女性が職を得るための技術を身につけるトレーニングを行っています。また、女子学生が卒業後に自立し生計が立てられるよう、職業訓練のプログラムを支援しています。
バングラデシュ
法律教育、カウンセリング、法廷代理の提供、伝統的なシャリシ(shalish)モデルに沿った紛争解決メカニズムのサポートを行うバングラデシュ法的支援基金[BLAST]に対する支援を行っています。BLASTはTAFの支援により、バングラデシュ初の法的サービスを提供する相談所を設立し、主に産業労働者の経済権の保護に主眼を置いています。バングラデシュの最も賑やかなビジネスの中心地ナラヨンゴンジで働く1,000人以上の女性労働者は、プログラムにより権利と労働法、雇用者向けの苦情受付のシステム、裁判手続きや利用可能な支援オプションについて熟知し、差別的な扱いを受けた際の雇用主との交渉技術を向上させました。また、現地NGOのNari Uddug Kendraへ行った支援では、多国間繊維取り決めの撤廃により影響を受ける恐れのある5,000人以上の女性労働者に対し、効率的な仕事探しや海外で職を得るための安全な移住の展望についての教育プログラムを提供しました。
カンボジア
多くのカンボジア女性は家族の出生、結婚、死亡などの各種届出による経済的な保障の確保に関してほとんど知識がありません。結婚の届出がないままの状態で配偶者の死亡や離婚に直面した場合、不動産の相続や、離婚後の扶養手当、子供の養育費などを主張する法的な権利を行使できないことになります。カンボジア政府は、TAFが支援を行っている現地NGOのWomen For Prosperityのアドボカシー活動により、出生と結婚届の遅延提出に関する処罰の撤廃、出生と死亡届の受理の無料化、結婚届けの登録料の減額、移動登録施設の供給を行いました。このような変革と意識改革キャンペーンの効果により、半年間の女性による届出が激増するという好ましい結果をもたらしました。これらはクメール女性が法的権利を主張するための重要なステップであり、アドボカシー活動は子供の養育費を請求する権利や一夫多妻制を罰するなど、女性の法的な権利を強化するよう民法の草案を変革する結果を生み出しました。
中国
中国の女性移住労働者の権利に関する政策改革を促す対話を支援しています。珠紅デルタ地区の3つのプロジェクトにより、女性移住労働者は健康、教育、個人的な問題に関するカウンセリングや法的な支援サービスを受けることが可能となりました。また、女性工場労働者のよりよい経済機会の確保に向け奨学金制度を創設しました。珠紅デルタ地区でのプロジェクトから得たノウハウをもとに、労働者の保護と労働権を保護するための教育を中国全土で大々的に行いました。
インドネシア
インドネシアの零細・小企業の3割以上の経営者は女性ですが、その多くは夫の名前を借りて法人登録を行っているため、離婚や配偶者の死亡によりローンの借り入れが困難になり、事業を失うなどのリスクに直面しています。自分の名義で法人登録を行うことの重要性と登録方法について、インドネシアの女性のためのビジネス団体がジャワ、スラウェシ、カリマンタン、バリ地域の合計6箇所で行ったトレーニングを支援しました。また、大衆を基盤としたイスラム団体ムハマディヤの女性部門Nasyiatul Aisyiyahを支援し、東ジャワの女性経営者のための金融機関の知識と事業拡大のための資金調達技術の向上に貢献しています。
ネパール
1990年施行のネパールの憲法には、男女平等に関する特別条項が明記されているにも関わらず、法律施行が十分に行われていません。財産権に関する法の抜け穴により女性の投資利用や財産の相続が妨げられ、雇用法に設けられた法的な差別条項により女性の職業の選択や雇用条件が影響を受けています。現地グループによるアドボカシー活動への支援により、外務省は女性のパスポート申請に必要となっていた夫もしくは親戚の男性の許可条件を撤廃しました。また、政府が女性の財産登録時の手続費用を減額したことにより女性の土地所有率が著しく増加しました。女性の権利に関する国民の関心が高まった結果、現地NGOのPro Publicによるセクシャルハラスメントの起訴は大きな注目を集め、最高裁判所は政府に対し、女性をセクシャルハラスメントから守るような法を立案するよう、指令を行いました。
ベトナム
ベトナム女性連合及びThe Center for Education Promotion and Empowerment of Womenとのパートナーシップでは、人身売買の被害者を含む貧しく社会的・教育的に恵まれない女性を支援するマイクロクレジットプログラムを支援し、生活の向上や起業と事業拡大に貢献しています。また、人身売買の被害者への法的支援サービスも提供しており、The Provincial Legal Aid Centerと地方分室を通し、被害者が土地や家を取り戻し、市民権の再登録と子供のための出生証明書を得るための支援を行っています。ベトナム労働総同盟とのパートナーシップでは、労働法に関して実施した女性の意識調査の結果を踏まえて労働法典の施行を促しました。ホーチミン市とビンズン省では現地の労働組合連盟と共に、繊維・製靴産業で働く女性労働者に対して、労働者の法的権利についての教育プログラムを提供しました。
アジア太平洋地域
2004年の多国間繊維取り決め[MFA]の撤廃により、衣料業界の就労者の大多数を占める女性労働者らに厳しい状況がもたらされることが予想されました。MFA撤廃によるアジア諸国への影響予想に基づき、バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、モンゴル、ネパール、パキスタン、フィリピン、スリランカの政策立案者を対象に、貿易環境の変化による悪影響緩和のための改革を促すワークショップを開催しました。ワークショップ後に行われたバングラデシュの現地パートナーによるアドボカシー活動により、バングラデシュ政府は輸出促進局内に余剰人員のための特別措置対策班を立ち上げ、失業者の支援資金として約300万ドル、新たな仕事環境で働くための職業訓練などに対し約500万ドルの拠出を義務付けました。